Zabbix AgentをWindowsにインストールする手順【MSI・ZIP別】

この記事では、従来版Zabbix AgentのWindowsへの導入方法を、MSI版とZIP版の2つの方法で詳しく解説します。
まず、インストールを始める前に、Agentのバージョンと導入方法の違いを整理しておきましょう。
導入前に知っておきたいこと
MSI版 vs ZIP版:どちらを選ぶ?
Zabbix Agentには、GUIで簡単にインストールできるMSI版と、手動でファイルを配置するZIP版があります。
MSI版は、IntuneやGPO、SCCMなどを使って多数の端末に一括で配布・管理するのに適しています。インストール後は「アプリと機能」に表示されるため、管理しやすいのが特徴です。また、サービス登録やファイアウォール設定をインストーラー側で持たせやすいのも利点です。
一方、ZIP版は、配置場所の自由度が高く、最小限の変更で試したい検証環境や、権限に制約がある環境に向いています。アプリ一覧には表示されず、サービス登録やファイアウォール設定は手動で行う必要があります。
Zabbix Agent vs Zabbix Agent 2
Zabbix Agentには、長年の実績があり、軽量なAgent(従来版)と、プラグインによる機能拡張が可能な新しいAgent 2があります。
Agentは、zabbix_agentd.exe
を実行ファイルとし、zabbix_agentd.conf
で設定します。UserParameterによる拡張が可能で、既存の運用資産を活かすのに最適です。リソース消費も少ない傾向にあります。
Agent 2は、zabbix_agent2.exe
を実行ファイルとし、zabbix_agent2.conf
で設定します。最新機能への対応が早く、プラグインで様々な機能拡張が可能です。その分、Agentに比べてリソースをやや多く消費する傾向がありますが、高機能な監視を行いたい場合に適しています。

この記事ではAgent(従来版)に絞って解説します。
事前準備(共通)
どちらの方法でインストールする場合でも、以下の準備が必要です。
- 管理者権限のPowerShellまたはコマンドプロンプト
- Zabbixサーバ/プロキシのIPまたはFQDN
- 監視対象のWindowsホスト名(Zabbix側の登録名と合わせるのが無難)
また、通信要件を確認しておきましょう。
アクティブ監視とパッシブ監視
Zabbix Agentには、パッシブ監視とアクティブ監視という2つの監視モードがあります。
パッシブ監視は、Zabbixサーバ(またはプロキシ)がAgentに対し、監視データを要求するプッシュ型の通信です。この場合、監視対象のWindows側でTCP 10050ポートへの受信を許可する必要があります。
アクティブ監視は、Agentが自律的に監視データを取得し、Zabbixサーバ(またはプロキシ)に送信するプル型の通信です。この場合、監視対象のWindowsからZabbixサーバのTCP 10051ポートへの送信を許可する必要があります。
ほとんどの場合、両方の監視を組み合わせて使用します。
方法A:MSI版でインストールする
MSI版は、GUIウィザードによるインストールと、スクリプトによるサイレントインストールの2つの方法があります。
A-1. GUIウィザードによるインストール
- Zabbix公式サイトから Zabbix Agent for Windows (MSI) をダウンロードします。
- ダウンロードしたファイルを右クリックし、「管理者として実行」を選択します。
- ウィザードの指示に従って進めます。最低限、以下の項目を入力してください。
- Server: ZabbixサーバまたはプロキシのIP/FQDN
- ServerActive(任意): アクティブ監視を使う場合は、ZabbixサーバまたはプロキシのIP/FQDN
- Hostname: このWindowsマシンのホスト名(Zabbix登録名と一致推奨)
インストール完了後、Zabbix Agentサービスが自動的に登録・起動されます。
A-2. サイレントインストール(例)
# パスは環境に合わせて変更してください
msiexec /i "C:\temp\zabbix_agent.msi" /qn ^
SERVER="192.0.2.10" SERVERACTIVE="zbx-proxy.example.local" HOSTNAME="WIN-SRV01"
/i
: インストール/qn
: GUIなしのサイレントモードSERVER
,SERVERACTIVE
,HOSTNAME
: 必要なプロパティを指定
A-3. ファイアウォールの受信許可設定
パッシブ監視を行う場合、Zabbix Agentが使用するTCP 10050ポートへの受信を許可する必要があります。
方法B:ZIP版で手動インストールする

ZIP版は、インストール先の自由度が高い方法です。
B-1. ファイルの展開
- Zabbix公式サイトから Zabbix Agent for Windows (ZIP) をダウンロードします。
- ZIPファイルを任意の場所に展開します。ここでは
C:\zabbix
に展開する例で説明します。
New-Item -Path "C:\zabbix" -ItemType Directory -Force | Out-Null
# 公式ZIPをC:\zabbixに展開してください
展開後、C:\zabbix\zabbix_agentd.exe
と C:\zabbix\zabbix_agentd.conf
が配置されていることを確認します。
B-2. 設定ファイルの編集
C:\zabbix\zabbix_agentd.conf
をテキストエディタで開き、以下の設定を編集します。
Server=192.0.2.10
ServerActive=zbx-proxy.example.local
Hostname=WIN-SRV01
LogFile=C:\zabbix\zabbix_agentd.log
```LogFile` を明示しておくと、後々のログ追跡が容易になります。
- Server: ZabbixサーバまたはプロキシのIP/FQDN
- ServerActive(任意): アクティブ監視を使う場合は、ZabbixサーバまたはプロキシのIP/FQDN
- Hostname: このWindowsマシンのホスト名(Zabbix登録名と一致推奨)
B-3. サービスの登録・起動
PowerShellで以下のコマンドを実行し、Zabbix Agentをサービスとして登録・起動します。
C:\zabbix\zabbix_agentd.exe --config C:\zabbix\zabbix_agentd.conf --install
C:\zabbix\zabbix_agentd.exe --start
Get-Service "Zabbix Agent"
最後のコマンドでサービスの状態が Running
になっているか確認します。
B-4. ファイアウォールの受信許可設定
MSI版と同様、パッシブ監視を行う場合はファイアウォール設定が必要です。
動作確認(共通)
インストールが完了したら、以下の手順で動作確認を行いましょう。
監視対象ホスト側での確認
- サービスの確認
Get-Service "Zabbix Agent"
でステータスを確認します。 - ポートの待受確認
Test-NetConnection -ComputerName 127.0.0.1 -Port 10050
で10050ポートがリッスンされているか確認します。
Zabbixサーバ側での確認
Zabbixサーバまたはプロキシから、zabbix_get
コマンドで疎通確認を行います。
zabbix_get -s <監視対象IP> -k agent.ping
応答があれば疎通成功です。
よくあるつまずきと解決策
- Zabbixコンソールで「Unavailable」のまま:
Hostname
とZabbix側のホスト名が一致しているか確認しましょう。- ファイアウォールで受信ポート(10050/TCP)が許可されているか確認しましょう。
- サービスが起動しているか確認しましょう。
- アクティブ監視のデータが来ない:
- 設定ファイル内の
ServerActive
が正しく設定されているか確認しましょう。 - プロキシ経由の場合は、
ServerActive=<プロキシ>
と指定する必要があります。
- 設定ファイル内の
- ログが見つからない:
- 設定ファイルで
LogFile
を明示的に指定しておくと、ログの場所が分かりやすくなります。
- 設定ファイルで
アンインストール手順
MSI版のアンインストール
- GUI: 「アプリと機能」からZabbix Agentを選択し、アンインストールします。
- サイレント:
# PRODUCT-CODEは環境によって異なります msiexec /x {PRODUCT-CODE} /qn
ZIP版のアンインストール
サービスを停止し、登録を解除してから、ファイルを削除します。
C:\zabbix\zabbix_agentd.exe --stop
C:\zabbix\zabbix_agentd.exe --uninstall
Remove-Item -Recurse -Force C:\zabbix
まとめ:結局どちらがいい?
- MSI版: 大量のWindowsサーバーに標準化された方法で導入したい場合に最適です。特に、サイレントインストールを使えば自動化も容易です。
- ZIP版: 検証環境や、手動で細かく設定したい場合に便利です。
本記事ではZabbix Agent(従来版)を解説しましたが、既存のテンプレートや運用資産を活かしやすいのが大きな利点です。必要に応じて、将来的にAgent 2への移行も検討できます。